オーストリア国民議会、批准を承認 |
2005年5月11日(水)、オーストリアの国民議会(Nationalrat[下院])は、出席した議員のほぼ全員の賛成の下、欧州憲法条約の批准を決定した。批准に反対したのは、Barbara Rosenkranz
議員一人であった。その理由として、同議員は、国民投票が実施されないことを挙げている(参照)。
オーストリア国内では、欧州憲法条約の内容そのものよりも、批准に先立ち、国民投票を実施すべきかという点に関心が集まっていたが(参照)、国民投票を開催しないことは、すでに2005年3月に決まっていた(参照)。しかし、5月11日の審議に際しても、この問題が再び浮上し、Barbara Rosenkranz 議員は、国民投票が実施されないことを理由に、批准に反対している。また、Jörg Haider 氏は、オーストリア憲法裁判所への提訴を検討しているが、同氏が新たに発足させた政党 BZÖ
に所属する議員は、Haider 党首の主張は遅きに失するとして、批准に賛成した(参照)。なお、欧州議会 の Hans-Peter Martin 議員(オーストリア)も提訴する意向を示している(参照)。
国民投票について、Wolfgang Schüssel 首相は、かねてより、オーストリア国内だけではなく、EU規模で実施すべきであると主張してきたが、EU理事会 では支持されなかったとしている(参照)。
国民投票が必要とされるのは、憲法条約によって国内憲法やオーストリアの中立性に変更が加えられると解されているためであるが(参照)、大半の議員は、この問題はすでに2005年3月に審議されており、改めて審議する必要はないと捉えている(参照)。
他方、憲法条約の内容については、ほぼすべての議員が、確かに改善すべき点もあるが、欧州議会の権限を強化し、また、基本権憲章を盛り込んでいることで、一つの前進にあたると捉え、批准を支持している(参照)。なお、オーストリア政府の広報活動(憲法条約に関する情報の普及)が十分ではないとする批判も出されてたが、Schüssel 首相はこれを退けている。
オーストリアの日刊紙 Der Standard は、今回のように、重要な案件について、ほぼ全ての議員の見解が一致することはまれであるが、それにもかかわらず、喝采や感動もなく、冷静に歴史的な案件が採択されることもまれであるとコメントしている(参照)。
批准には、さらに連邦議会(Bundesrat)の承認が必要になるが、5月25日の会議で批准が了承されるものとの見られている(参照)。
オーストリア連邦議会、批准を承認
|