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欧 州 委 員 会、飲 酒 対 策 を 採 択



 EU内では、健康に悪い影響が生じるほど大量にアルコールを摂取する成人が5500万、また、(交通事故や肝臓がんなど)飲酒が原因で死亡する人が、年間に19万5000人にも達するとされる。飲酒運転が理由で死亡する者は、交通事故死亡者の25%以上にのぼり(年間約1万人)、濫用飲酒が喫煙や高血圧に続き、早期死亡(15〜29歳での死亡)や疾病の主要原因になっているとされる(参照)。

 このような状況を踏まえ、欧州委員会は、2006年10月24日、加盟国の飲酒対策を支援するためのプログラムを採択した。EU戦略の重点は、@ 青少年の保護、A 飲酒を原因とする交通事故の削減、B 成人の健康保護と経済に与える悪影響の縮小、C アルコール大量摂取の悪影響に関する情報普及、D 信頼しうる統計・情報収集の支援に置かれている。なお、健康保護に関する基本的な権限は加盟国のもとに残っていることを考慮し、EUレベルでの法律制定は計画されていない。EUはあくまでも加盟国の政策を支援するに過ぎないが、その一環として、欧州委員会は以下のプログラムを実施する予定である。
アルコール

“Alcohol and Health Forum”の立ち上げ
 飲酒による健康被害に関する研究、情報の普及・収集、教育活動を行うため、2007年6月までに、
“Alcohol and Health Forum” を立ち上げる。

運輸政策との調整
 飲酒による交通事故対策を効率化するため、道路交通の安全に関するEUの行動計画との調整を行う。

民間企業との協力
 アルコール飲料の販売・広告規制に関するEUや加盟国ないし地域の政策を支援するため、民間企業と協力する。また、広告活動にモラルを求めるため、EU内で統一された規範を設ける。


 アルコールの濫用摂取による健康被害から市民を守るため、公的措置を強化する必要性は否定しないもの、EUの行政機関による対策には疑問を示す見解もあるが(参照)、欧州委員会は、EU加盟国政府(EU理事会)の要請を受け行動しいている(2001年6月のEU理事会決議2004年6月のEU理事会決議参照)。なお、前述したように、加盟国の政策権限を考慮し、欧州委員会は、EUレベルでの立法化を検討していない。




(参照)

欧州委員会のプレスリリース(2006年10月24日)

 ・ 欧州委員会のメモランダム(アルコール被害について)

Die Presse v. 25. Oktober 2006 (Kritik an "Alkohol-Bevormundung")

(2006年10月28日 記)