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E  C  の 権 限


ECレベルでの農業政策の導入に基づき、加盟国はECに主権を委譲し、自らの主権行使を放棄した。主権の委譲や、これに伴う主権行使の放棄は、何も農業政策の分野に限ったことではないが、農業政策は、これらが最も早く実現された政策の一つであり、欧州統合を推進する役割を果たしてきた。また、ECの権限の排他性が厳格に貫徹されているのは、農業政策のみとされている(Waltraud Hakenberg, Grundzüge des Europäischen Gemeinschaftsrechts (Nomos Verlagsgesellschaft 2003, 3rd edition), p. 155 (para. 66))。なお、ECは、原則として、加盟国間にまたがる問題のみを扱うことができるが、農業政策の分野では、それに限定されない。

農業政策分野におけるECの権限は排他的かどうか、すなわち加盟国は、同政策に関するあらゆる権限をECに委譲しているかどうかについては異なる見解が主張されている。EC条約はこの点に触れていないが、仮にこの問題を否定するにせよ、ECの権限は非常に広範囲にわたるため、その権限と加盟国の下に残された権限とを区別することは困難な場合が少なくない。現在では、ECレベルでの協議なしに、加盟国が単独で政策を決定することはほぼ皆無であると言ってよいであろう。また、仮に加盟国が権限を有する場合であれ、ECによって何らかの措置が講じられている場合には、加盟国は独自の措置を発しえないと解される (EC裁判所同旨。See Case 407/85, Drei Glocken v. USL Centro Süd [1988] ECR 4233 (para. 26))。共同体法が網羅的に制定されている現状をも考慮すると、ECの権限は、ほぼ排他的であると解してよい。

 




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