地域研究(欧州)

  • 旧東側諸国は社会主義国か、それとも共産主義国か?
  社会主義と共産主義は、生産手段の私有化を認めない点では同じである。しかし、社会主義の下で労働者はその能力に応じて働き、報酬を得る、つまり、全ての労働者の賃金は同一ではないのに対し(なお、社会的給付という形で弱者を保護する点において社会主義と資本主義は異なる)、共産主義の下では労働者は働きに応じてではなく、個人の必要性に応じて対価や給付を得る点で異なる。また、社会主義は使用者と労働者といった階級の存在を認めるのに対し、共産主義は認めない点で異なる。

 旧東側諸国(例えば、ソビエト社会主義共和国連邦)は階級のない社会、つまり、共産主義社会の実現を目指していたが、実際には階級(知識人・特権階級と労働者・農民)が存在する社会主義国であった。また、労働の対価となる商品・物資は不足していたため、労働者に必要な分だけ与えることはできなかった。社会主義を科学的に体系化し、著書「共産党宣言」でも知られるカール・マルクスは、ソ連(ロシア)のように生産性の低い国で共産主義は実現できないと述べていた。

 なお、これらの国では、労働者によって政治は行われると考えられていたため、労働者から政治を委託された共産党以外の政党の結成を認めていなかった。このように一党独裁ないし労働者による政治の支配を説くのが共産主義であり、複数の政党の結成・活動が認められる市民的な民主主義の理念に合致するのが社会主義として捉えることもできる。つまり、社会主義と民主主義は対立しない。


「地域研究(欧州)」のページに戻る

Voice