9th May is "Europe Day"

 我が国において、第2次世界大戦は1945年8月15日に終結したとされていますが、ヨーロッパでは、それより3ヶ月ほど早い5月8日に終わったとされています。翌46年9月19日、元イギリス首相のウィンストン・チャーチルは、荒廃したヨーロッパの復興にはヨーロッパ諸国の協力が不可欠であること、とりわけ、長年にわたり戦火を交えてきたドイツとフランスの和解が重要であることを訴えます(こちらを参照)。

 これに応える形で、当時のフランスの外相ロベルト・シューマンは、1950年5月9日(つまり終戦の日の翌日)、ヨーロッパ諸国の石炭・鉄鋼業を共同で管理する国際機関の設立を提唱します(シューマン宣言)。石炭・鉄鋼業は当時の基幹産業であり、これを諸国が共同で管理することは経済復興に貢献すると考えれていましたが、石炭・鉄鋼業が盛んであった地域をめぐり、独仏両国は戦争を繰り返してきたという史実もありました(参照)。
 
 シューマンの考え(シューマン宣言)に賛同したドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの6ヶ国は、1952年7月、欧州石炭・鉄鋼共同体を設立し、石炭・鉄鋼業を共同で管理するようになりました。また、その成功を受け、1958年元旦には欧州経済共同体(EEC)と欧州原子力共同体を設け、欧州統合の基盤を作っていきます(参照)。そのため、1985年、当時のEC加盟国首脳会議は、「シューマン宣言」が出された5月9日を「ヨーロッパの日」(Europe Day)と定めました。なお、2004年10月に制定された欧州憲法条約では、5月9日がヨーロッパの日として正式に定められるようになりましたが(第I-8条第5項、こちらを参照)、同条約は発効するに至りませんでした(こちらを参照)。そのため、新たにリスボン条約が締結されました(こちらを参照)。同条約は発効し、現在のEU法の基盤となっていますが、5月9日を「ヨーロッパの日」とする規定は盛り込まれていません。これは、EUが国家であるという誤ったイメージ(または国家としてのイメージを惹起させる要素の存在)を取り除く方がよいとされたためです。ただし、当時の27加盟国中、16ヶ国は、5月9日を「ヨーロッパの日」とする宣言を共同で採択しています。

 このように明確な法的基盤には欠けますが、1986年以降、「ヨーロッパの日」にあたる5月9日やその前後の日・州週には、EU内で様々なイベントが行われています。ただし、市民の関心はそれほど大きいとは言えません。市民により身近な存在になることがEUの重要政策課題の一つにあたりますが、それは容易に実現できるものではありません。


(参照)
 

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