法 定 代 理 の 準 拠 法


 
東京家裁昭和57825日審判、渉外判例百選(第3版)56頁参照〕


 未成年者A(中国国籍)は、B女(日本国籍)の実の子供であるが、C(Bの養母)の養子となった。その後、Cが死亡したため、AとBはCの財産(不動産)を相続したが、相続税の納入に困り、延納を申請した。また、その担保として、相続財産である不動産に抵当権を設定するため、Aに代理人を付けるよう求めた。なお、Aの実父は中国国籍を有し、台湾に居住していた

代理

 親権者である養親(C)の死亡後、実の親(B)が未成年者養子(A)の法定代理人になりうるかどうかという問題については、@実の親が親権者になるかが問われているので、親子関係の問題 として捉える立場と、A国際私法上、これは 後見 の問題として扱うべきとする立場があるが 、Aの代理人の選任について、東京家裁(東京家裁昭和57年8月25日審判、渉外判例百選(第3版)56頁参照)は、@の立場に従い、法例第21条(適用通則法第32条)に従い準拠法が決定されるとした。当時の法例の規定によれば、父の本国法が準拠法となる 。同人は、中国籍を有しているが、その本国法は、中華民国法(台湾法)と解するのが相当であると家裁は判断した。同国の民法上、未成年者が養子縁組をなしたときは、その親権は養親のみに与えられ、養親が死亡したとしても、当然に実父母の親権が回復するものではないと解されている。そして、養親の死亡によって、親権を行使する者がいなくなった場合には、看護人(中華民国民法第1091条)が法定代理人となるが、誰が法定代理人になるかは、親子間の法律関係の準拠法(法例第21条、適用通則法第32条)に基づき決定される。


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