A.先決問題とは 以下の事例を検討してみよう。 中華民国[台湾]人のAは、同じく中華民国人のBと離婚し、日本人のCと再婚したが(東京で結婚式を挙げたものとする)、後に死亡した。Cが配偶者として、Aの遺産を相続しようとした際、BはAC間の婚姻は無効であると主張し、配偶者としてのCの相続権を争った。 このケースでは、そもそもCは、配偶者として相続しうるかどうかを検討する前に、AC間の婚姻の成立について検討しなければならない[1]。これを先決問題といい、これに後続する相続問題を本問題という[2]。
先決問題の準拠法はどのようにして決定されるべきであろうか。この問題について、法例は規定していないため、解釈で補う必要があるが、通説・判例は、法廷地の国際私法に従って、先決問題の準拠法は決定されるべきであるとしている(法廷地法説)。
これは、先決問題も本問題に含まれる問題と考え、法廷地国の国際私法の機能(すなわち、渉外事件に適用される法令〔準拠法〕の指定)を重視する立場である。要するに、この理論によらないならば、法廷地国の国際私法規定は空文化するとされる。
また、後日、先決問題のみが訴訟の対象となる場合にも、準拠法は異ならないため(参照)、裁判所の判断も異ならないという利点がある。 もっとも、先決問題は(本問題の)準拠法の適用に際して生じる問題であるとして批判されている。
その他の学説については こちら
[1] 日本民法第739条によれば、婚姻は届け出ることが必要であるのに対し、中華民国法第928条によれば、式を挙げ、2名以上の承認があれば婚姻は成立する。 [2] なお、その他に、先行問題や部分問題について指摘されることがある。この点につき、櫻田「国際私法」第2版134頁参照。 [3] 例えば、道垣内『ポイント国際私法総論』(有斐閣、1999年)115頁以下参照。 [4] 道垣内・前掲書130頁以下参照。
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