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不統一法国の法が準拠法に指定される場合に関する問題


 1. 問題の所在

 米国やオーストラリアなどの連邦国家では、各州が独自 に法令を制定しうる。そのため、一国内(同一の主権領域)内で異なる法令が施行されている場合があるが、このような国を地域的(あるいは場所的)不統一法国とよぶ。




リストマーク アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア

 各州に独自の立法権が与えられているため、国内で異なる法令が施行されている。近時は、死刑制度や少年法など、刑事法の内容が州間で異なっている(連邦レベルで統一されていない)ことが話題になることもあるが、民事法の分野でも同様である。

  
(参照) 米国各州の離婚法
 

リストマーク イギリス

 イングランドとウェールズは同じ法域に属するが、スコットランドでは、独自の法律が適用されている。


(参照)

山田燎一『国際私法』(新版)有斐閣2003年、78頁





 このような国の法令が準拠法に指定される場合、実際に適用されるのは、どの法域の法令か(具体的には、どの州ないし地域の法令か)を決定しなければならない。



 

 2. 間接指定主義と直接指定主義

 この問題については、以下の2つの理論が提唱されている。

 

  @ 間接指定主義

準拠法国の規則に基づき、どの地域の法令が適用されるかを決定する理論適用通則法第38条第3項参照



間接指定主義



  A 直接指定主義

所在地や行為地など、場所が連結点とされている場合には(適用通則法第13条第17条など)、その場所の法律が準拠法になるとする理論


直接指定主義



 この問題は、連結点が場所(常居所 、行為地など)であるか、または国籍であるかを区別して検討することを要する。


(1) 場所が連結点である場合

   A説に従って、適用通則法を解釈・適用するのが適切である。


(2) 国籍が連結点である場合

 国籍が連結点とされるのは、人の身分や能力に関する問題であるが ( 第4回のレジュメ参照)、人は本国内のどの地域の法令に服するかは、その国の立法者が最も適切に判断できると考えられるため、@説が通説である。


 適用通則法第38条第3項も同様に当事者が地域的不統一法国の国籍を有するとき は、「その国の規則に従い」準拠法を決定し、規則がないときは、当事者の 最密接関係地 によると定める。なお、同項は、国籍が連結点になる場合についてのみ定めており、その他の連結点による場合については規定していない。

 38条第3項のその国の規則」とは、どの地域の法律を適用するかについて定める法規のことであり(これを準国際私法とよぶ)、民法や商法などの 実質法 を指すわけではない。  




リストマーク 事 例 の 検 討  リストマーク


◎ 横浜地裁平成3年10月31日判決
  渉外判例百選(第3版)14〜15頁(佐野)


1. 事案の概要

 XとYは共に日本人として出生したが、後に米国に帰化し、米国籍を取得した。両人は結婚し、A(米国籍)をもうけたが、後に不仲になり、X は離婚とAの親権者の決定を求めて提訴した。


2. 判旨

(1) 離婚の準拠法について

 離婚請求の準拠法は、法例第16条(適用通則法第27条)により、第14条(第25条)の規定を準用することになる。そのため、まず、夫婦(XY)の共通本国法が存するか検討しなければならない。

 両者は米国籍を有するが、米国は、法例第28条第3項(適用通則法第38条第3項)にいう「地方ニ依リ法律ヲ異ニスル国」、すなわち、地域的不統一法国に当たる。そのため、米国の「規則」に従い、どの地域の法律を本国法とすべきかを決定しなければならないが、同国には、この「規則」はない。そのため、第28条第3項(第38条第3項)に基づき、XYの本国法は、両者の最密接関係地法となる。

 裁判所は、XとYが帰化した土地を考慮し、Xの本国法はアリゾナ州法、また、Yの本国法はメリーランド州法と判断した。したがって、両者に共通の本国法は存在しないため、次に、両者に共通の常居所地法があるか検討しなければならない(参照


(2) 両親の離婚の際の子供の親権者の決定の準拠法について

 両親の離婚の際の親権者の決定は離婚の問題として捉えるべきか、または親子間の法律関係に関する問題として捉えるべきかという議論があるが(リストマーク
性質決定の問題について、こちら を参照)、親権者の決定は、子の福祉を重視して行うべきであり、その準拠法も子を中心にして指定されるべきであるため、法例第21条(適用通則法第32条)を適用するのが相当である参照

  リストマーク 法例第21条(適用通則法第32条)による準拠法の決定


 そこで、まず、Aの本国法について検討するが、Aは米国籍を取得しているため、その本国法は米国法となるが、前述したように、米国は地域的不統一法国である。同国には、法例第28条第3項(適用通則法第38条第3項)の意味における「規則」がないため、Aの最密接関係地法が本国法になるが、Aは、出生以来、日本国内に居住しており、米国には約2か月間旅行で滞在したことがあるに過ぎない。このことに照らすと、Aの最密接関係地法は、日本法と解される。したがって、Aの本国法(このケースでは、最密接関係地法)と両親XYの本国法は同一ではないため、親権者の決定に関する準拠法は、Aの常居所地法となる。



 3. 人的不統一国法の指定

 国によっては、人種や信仰する宗教の違いに応じて、適用される法令を区別している場合がある(例えば、インドの宗教に基づく婚姻法の適用)。このような国を人的不統一法国とよぶ。前掲の地域的(あるいは場所的)不統一法国と区別する必要がある。

 適用通則法第40条は、間接指定主義を原則としている。なお、同条は、住所地法については触れていないが。難民について、住所地法の決定が問題になる場合には(詳しくは こちら、第1項を類推適用する。

 



リストマーク 事 例 の 検 討  リストマーク


◎ 東京地裁平成2年12月7日判決
  判時第1424号 84頁


1. 事案の概要

 日本人女性Xは、インドネシア人男性Yと結婚し、子供(インドネシア国籍をもうけたが、後に不仲になり、離婚および未成年である子供の親権者の決定を求め、訴えを提起した。


2. 判旨

(1) 離婚の準拠法について

 法例第16条(適用通則法第27条)但書きによれば、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人のときは、離婚の準拠法は日本法となる。Xは日本に常居所有する日本人であるため、日本法による。

 

(2) 離婚に伴う親権者の決定の準拠法について
 

 両親の離婚の際の親権者の決定は離婚の問題として捉えるべきか、または親子間の法律問題に関する問題として捉えるべきかという議論があるが、親権者の決定は、子の福祉を重視して行うべきであり、その準拠法も子を中心にして指定されるべきであるため、法例第21条(適用通則法第32条) に従い、準拠法を決定するのが相当である参照

    リストマーク 法例第21条(適用通則法第32条)による準拠法の決定


 子供とXの本国法は同一ではない。他方、子供とYの本国はインドネシアで一致しているが、同国では、信仰する宗教によって適用法が異なる。子供とYの宗教は同一ではないため、両者の本国法が同一であるとはいえない。したがって、子供の常居所地法が準拠法となる。


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