法  律 行 為

 

 法律行為とは、行為者の意思表示を要素とし、通常、権利関係の変動を生じさせる行為 を指す。その最も一般的な例は、契約である。

 

1. 総説

 法例第7条は、法律行為の(   )と(   )について、また第8条は、法律行為の(   )について定める。


第7条・・・法律行為の成立要件
第8条・・・法律行為の
方式

 身分法上の法律行為(婚姻や養子縁組など)に関しては、特別の規定が設けられているので(法例第[   ]条以下参照)、法例第7条および第8条の対象となるのは、主として契約(債権的法律行為)である。

 

2. 法律行為の成立および効力(法例第7条)

(1) 法例7条は、契約の成立と効力について、当事者自治の原則を認め(第1項)、当事者の意思が明らかでないときは(   )法による(第2項)と定める。これは、当事者の意思の推測(一般に当事者は行為地法を準拠法にしていると考えられる)や、行為地法を知ることは両当事者にとって容易であることに基づいているが、画一的な規定の仕方には批判が多い。


準拠法の合意


 当事者の意思は、例えば、「本契約の準拠法はイギリス法とする」とか、「本契約の文言は、日本法に従って解釈される」というような明文の定めが契約書内に設けられている場合に限らず[1]、(   )的であってもよい。すなわち、準拠法が明確に定められていない場合に、直ちに当事者の意思が不明であるとして(    )法を適用するべきではなく、契約関係の諸般の事情(契約の型・性質、契約の目的物、裁判管轄約款、契約書で使用されている言語や当事者の国籍・住所など)から当事者の意思を推定して、準拠法を探求すべきである(通説)[2]。もっとも、準拠法の指定が明確でない場合に、直ちに行為地法を適用した裁判例が多い[3]

 

(2) 法律行為の成立と効力を一つの準拠法によらしめるのは、両者は因果関係にあり、密接に関連しているためである。もっとも、近時、諸外国では、契約を分割して、それぞれに準拠法を指定する分割指定を認める立法例もあり、契約が部分的に分割できる場合にはこれを認める見解が我が国でも有力である[4]

 

 (3) 準拠法指定の合意が有効かどうかが問題になることがあるが。例えば、合意が(  )や(  )に基づいているため、その有効性が問われる場合である。これは国際私法の合理的解釈(ないし国際私法における実質法的解決)によって判断するべきとするのが従来の多数説である[5]

 もっとも、当事者が指定した準拠法にしたがって判断する方が簡明であり、また、当事者の意思に合致するとする見解が有力に主張されている(1955年のハーグ「有体動産の国際的性質を有する売買の準拠法に関する条約」第2条第2項参照)。 


合意の成立の暇疵


 (4) 遠隔地的法律行為(第9条)

 準拠法の指定に関する当事者の意思が明らかでないときは、(   )法によることになるが(第7条第2項)、異なる国に滞在する者の間で、(   )によって契約(遠隔地的法律行為)が締結された場合に関し、準拠法の合意が不明な場合、行為地はどのようにして決定すればよいであろうか。




当事者間の
合意が
不明
行為地法
(第7条第2項)
行為地はどこ?

※ 当事者間で準拠法が明瞭に合意されていれば、それによる。


 この問題について、法例第9条第2項は、契約の成立および効力については、@申込の(  )地を行為地とみなすと規定し、Aもし、申込みの発信を受けた者(すなわち承諾者)が、申込みの発信地を知りえないときは、(     )を行為地とみなすと規定する。これは、@に関しては、承諾よりも(   )の方が重要であること(承諾は申込みを受けた後になされるものであるから)、また、Aに関しては、承諾者は、申込者はその住所地から発信していると推定することが合理的であると解されるためである。

  なお、申込に変更を加えた承諾は、「新たな申込」と解する裁判例がある[6]


  第9条第2項は「契約」について定めているため、第1項は単独行為(一方的意思表示[例えば、契約の解除や遺言など)に関して定めていると解される。


  第9条第2項は、遠隔者間の契約の「成立及ヒ効力」のみに関する規定であり、「方式」に関しては定めていない。第8条は方式について定めているが、通説は、この問題には第8条が適用がされるのではなく、申込については申込地法が、また承諾については承諾地法が適用されると解する。

  


  問題

@

A(日本人)とB(ドイツ人)はドイツにある宝石の売買について約束を交わしたが、引渡し場所について、後に争いが生じた。この問題の準拠法はどのようにして決定されるか。

A

@のケースにおいて、Bは、18歳の未成年者で、本件売買について、親の同意を得ていないから、契約を取り消しうると主張している。この問題の準拠法はどのようにして決定されるか。

B

@のケースにおいて、Aの意思表示に暇疵があったため、契約を取り消しうるかどうかが問題になった。この問題の準拠法は何か。

C

@のケースにおいて、ABは、将来、紛争が生じた場合の準拠法について合意していなかったとする。この場合、準拠法はどのようにして決定されるか。また、Aの強迫により、準拠法が日本法と指定された場合はどうか。

D

@のケースにおいて、Aは、インターネットによって、Bに宝石を注文し、Bがこれに応じ契約が成立したが、Aが錯誤無効を主張している。この問題の準拠法は何か。


 

3. 法律行為の方式(法例第8条)

 (1)  法律行為の方式とは、法律行為が有効に成立するために必要な意思表示の外部的表現方法を指す。例えば、土地の売買といった法律行為が有効に成立するためには、(  )でなされなければならないのか、公的機関の証明が必要かどうか、または届出が必要かどうか問題になる。

  なお、婚姻の方式については、法例第(  )条第(  )項および第(  )項が、A遺言の方式については、「遺言の方式の準拠法に関する法律」が、また、B手形・小切手行為に関しては、手形法第89条第1項、小切手法第78条第1項が適用されるため、法例第8条は適用されない。

 ※ 親族関係法律行為の方式については、法例第22条を参照されたい。


 (2)  法律行為の方式は、法律行為の効力(実質)と密接に関連するため、法例第8条第1項は、方式は効力の準拠法によると定める(成立要件の準拠法ではない)。そのため、債権行為[7]であれば第7条に基づき、また物権行為[8]であれば第10条に基づき、方式の準拠法が決定される。


方式の準拠法





  問題

@

ABは、アメリカにある建物の売買について契約したが、その方式の準拠法は何か。Aは、Bの強迫を理由に本件契約の取消しを主張する場合の準拠法は何か。

A

上のケースの売買契約において、買主Aの支払いを担保するために、Aの財産に抵当権を設定する場合、その方式に関する準拠法は何か。Aに保証人をつける場合、その方式に関する準拠法は何か。




 もっとも、これを徹底すると、法律行為の成立が困難になる場合がある。したがって、第8条第2項は、行為地法によれば、適法とされる方式に従って法律行為をなしうる旨を定める(「場所は行為の方式を支配する」という原則)。 なお、この補則規定は物権行為の方式には適用されない(第2項但書)。従って、この場合には第1項の原則に従い、効力の準拠法、すなわち、目的物の所在地法(第10条参照)による[9]。これは、目的物の所在地法によらなければ、物権行為の方式(例えば、登記が必要かどうか)に関する利益が保護されないことに基づいている。



  まとめ − 法律行為の方式

@

法律行為の効力の準拠法による(第8条第1項)

 債権行為の方式 … 当事者によって指定された法令(第
7条第1項)
 物権行為の方式 … 目的物の所在地法(第10
条)

A

行為地法によってもよい(第8条第2項本文)。ただし、物権行為の方式に関しては、効力の準拠法によらなければならない(第2項但書)。


  

(3) 法律行為の「方式」と対抗要件

  ある法律行為の対抗要件として、特定の方式が要求される場合がある。例えば、債権が譲渡される場合、@債務者に対しては譲渡人からの通知または債務者の承諾が、またA債務者以外の第三者に対しては、確定日付のある証書(例えば、内容証明郵便)による通知や承諾が対抗要件として必要になる。



債権譲渡 債権譲渡



  この確定日付のある証書による通知は、法律行為の方式と捉えることもできるが、法例は、債権譲渡の第三者に対する対抗力について特別の規定をおいているため(第12条)、これは、第8条の方式の問題としてみるべきではない。

 債権質設定(例えば、定期預金債権を対象とする質権の設定)の第三債務者およびその他の第三者に対する対抗要件として、確定日付のある証書による通知または承認が必要とされる場合も同様に(民法第364条参照)、方式の問題としてではなく、効力の問題として扱う。

  同様に、物権行為の対抗要件として要求される登記や引渡も、方式の問題ではなく、効力(物権の実質)の問題として扱う。従って、法例第10条に基づき、準拠法を決定する。

 



  問題

@

ABからB所有の建物(ドイツ所在)を購入した。その後、Bは本件建物をCにも譲渡し、Cはこの建物に引っ越した。ACに建物の明渡しを求めることができるか。この問題の準拠法は何か答えなさい。

A

上のケースにおいて、Cは、建物だけではなく、土地も購入しているものとする。Cは、ドイツ法上、建物のみの売買は無効で、土地も一緒に購入しなければならないとして、Aに対抗しているが、この問題にドイツ法を適用してもよいか。

B

Aは購入資金として、D銀行ベルリン支店から融資を受けた。その担保として、D銀行は、東京支店に5000万円の定期預金口座を設けるよう支持したため、Aはこれに従った。その後、Aが破産したため、D銀行ベルリン支店は、Aの定期預金口座を差し押さえたところ、Aの別の債権者Eから異議を唱えられた。D銀行のベルリン支店と、Eはどちらが優先的に債権を回収しうるか。


 

 

 

[1]      契約と指定された準拠法との間に関連性がなくてもよい。

[2]      東京地判昭和52422日、渉外判例百選(第3版)74頁参照。

[3]      札幌地判昭和49329日、渉外判例百選(第3版)76頁参照。

[4]      東京地判昭和52530日、渉外判例百選(第3版)72頁参照。

[5]      溜池「国際私法講義」(2)332頁参照。例えば、契約内容に関し、重大な錯誤や、相手方の詐欺・強迫がある場合は、準拠法に照らして契約の有効性について判断するのではなく、国際私法上、このような契約は(当然に)無効または取り消しうると考える。

[6]      大阪地判大正10311日。

[7]      当事者間に債権・債務関係を生じさせる行為(例えば、売買契約など)。

[8]      物権自体の設定・移転を直接の目的とする法律行為。例えば、土地の売買契約に基づき、土地の所有権を移転したり、また支払いを確保するため、買主の財物に抵当権を設定する行為などである。

[9]      溜池「国際私法講義」(3)311頁参照。

 



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