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 日本人の騎手Xは、マレーシアやシンガポールで活動し、実績を挙げていたが、日本の出版社Yの報道によって、海外レースにおける八百長疑惑が広まった。Yの名誉毀損(不法行為)によって、Xは社会的信用を失ったとし、Yに慰謝料等の支払いを求める訴えを提起した。

 この事件は渉外事件であるため、準拠法を決定しなければならないか。なお、東京地裁は、特に準拠法の決定について触れることなく、日本法を適用し、判決を下している(東京地裁平成4年9月30日判決、判タ第825号193頁=判時第1483号79頁)。

 なお、判決時の国際私法によれば、不法行為に基づく債権の発生は、原因事実発生地法によるとされていたが(法例第11条)、現行法は、結果発生地法を原則としている(適用通則法第17条本文)(詳しくは こちら)。もっとも、名誉毀損に関し、現行法は特別の規定を設けており(第19条)、それによれば、被害者の常居所地法が準拠法となる。また、第20条は「明らかにより密接に関係がある地の法」によると定めている。

 


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