民 事 訴 訟 手 続 の 流 れ

 国際民事訴訟法の授業を進める上で民事訴訟に関する基礎知識は重要であるため、以下では、民事訴訟手続(民事裁判手続の進行)について簡単に説明する。

 

 X(原告) → @ 裁判所[1]訴え[2]を提起[3]
原告    (訴状[4]の提出)

例:

 Xから借りている建物をY(被告)が無断で転貸しているため、Xは契約を解除し、Yに建物の明渡しを請求した。

      
   ↓

A  裁判長による訴状の審査[5]
    必要に応じ、訴状の補正命令、印紙の追貼命令

   ↓

B Y (被告への訴状(副本)の送達[6]
  第1
回口頭弁論期日の指定[7]

   ↓

C 事案の取り調べ(事実関係の確定)リストマーク 参照

例:

 YはXの承諾を得ているとし、承諾書を提出したが、裁判所は、承諾書は偽造されたものであり、Xの主張が正しいことを認定した。

      
   ↓

D 法令の適用


例:

 民法6122

        
   ↓

E 判決の言渡し

   ↓

F 判決の執行

                                                                               


[1]     財産事件の場合、訴額(訴訟の目的の価額)が140万円以下の請求は簡易裁判所に、また140万円を越える請求および不動産に関する訴訟は地方裁判所に提起する(裁判所法第33条第1項および第24条第1号参照)。

[2]     訴えとは、原告が被告との関係において、自らの請求(法律上の主張)が法律的に正当かどうかの審判を裁判所に求める行為である。

[3]     民事訴訟法第133条第1項参照。その例外として、民訴法第273条(任意の出頭による訴えの提起等)、第275条第2項(訴え提起前の和解)、第395条(督促異議の申立てによる訴訟への移行)参照。

       訴状には一定の事項を記載し(第133条第2項)、作成者である原告またはその代理人が記名押印し(民事訴訟規則第2条)、訴額に応じて収入印紙を貼り、手数料を納めなければならない(民事訴訟費用等に関する法律第3条、第4条、第8条参照)。訴状に収入印紙を貼る必要性から、ファックスで訴状を提出することは認められない(民事訴訟規則第3条第1号)。

[4]     訴状とは、訴えの提起にあたって、(第1審)裁判所に提出する書面のことである。民訴法第133条(訴え提起の方式)、第271条([簡易裁判所における]口頭による訴えの提起)および第273条(任意の出頭による訴えの提起等)参照。

[5]     民訴法第137条(裁判長の訴状審査権)参照(詳しくは こちら)。


裁判長による訴状の審査

[6]     民訴法第138条(訴状の送達)参照。我が国は職権送達主義を採用している(民訴法第98条)。送達に関する事務は裁判所書記官が所轄する。送達の方法としては、郵送または執行官に届けさせる方法があるが、どちらを採用するかは裁判所書記官が決定する(第98条および第99条参照)。詳しくは こちら

[7]     民訴法第139条(口頭弁論期日の指定)参照。

       民事訴訟手続とは、当事者間における民事上の紛争を裁判によって解決するための手続であるが、公平な裁判を行うためには、当事者双方にその見解を十分に主張しうる機会を平等に与えなければならない(双方審尋主義、当事者対等の原則、武器平等の原則)。当事者双方を対席させて弁論や証拠調べを行う審理方式を口頭弁論と呼ぶ。訴えの提起があれば、裁判長は、口頭弁論期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない(必要的口頭弁論[第87条および第139条参照])。もっとも、裁判を迅速に終結させる必要性から、判決ではなく、決定によって完結されるべき事件に関しては、裁判所は、口頭弁論を実施するかどうを決定しうる(任意的口頭弁論[第87条第1項但書])。また、訴えが不適法で、その不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を開かずに、訴えを却下することができる(第140条)。当事者の呼出し費用が予納されていない場合についても同様に処理することができる(第141条)。

 

 



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