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ユスティティア EUの教育・青少年政策




F 当事者の欠席と手続の中断・中止


 2. 手続の停止(中断と中止)

  2.1.序

 訴訟の係属中、何らかの事由により、訴訟手続が法的に進行しない状態になることを手続の停止と呼ぶ。現行民事訴訟法上、これには、@一方の当事者に何らかの事情が生じ、訴訟追行者の交代が必要になる 中断(第124条)と、A天災やその他の事由に基づく中止(第130条〜第131条)がある。
 

 

根拠条文

生じるケース(具 体 例)

中 断

第124条

当事者の死亡、当事者である法人の合併による消滅など

中 止

第130条〜第131条

天災、交通手段の不定期間の不通など

 

 なお、裁判所が期日を指定しないために手続が停止したり、当事者の欠席に基づき手続が事実上、停止する場合(参照)とは異なる。また、除斥または忌避 の申立てに基づき、停止される場合もあるが(第26条本文)、この場合、証拠保全や保全命令等の急速を要する訴訟行為を許される点で(同但書)、以下で説明する手続の停止(中断・停止)とは異なる。 

 訴訟手続が停止(中断・中止)している間、当事者だけではなく、裁判所も有効に訴訟行為をすることができない(なお、後述する 受継の申立てやそれに関する裁判続行命令中止の取消決定 は除く)。そのため、中断・中止中に行われた証拠調べやその他の訴訟行為は裁判所・当事者間においては無効であるが(これに対し、裁判所の内部においては、裁判官の合議や判決の作成などは有効とされる)、当事者が責問権を放棄・喪失すれば有効となる。


2.2.中断

 (1) 中断事由

 @ 係属中の訴訟手続は、例えば、自然人である当事者の死亡や法人の合併に伴う消滅によって中断する(第124条第1項第1号および第2号)。このような場合、相続人や合併後に発足した法人は訴訟手続を受継しなければならない。訴訟手続の中断は、新しい訴訟追行者が訴訟手続に関与できる機会を保障するために設けられている。なお、訴訟物が一身専属的な権利(例えば、配偶者の離婚請求権、労働者の地位回復ないし保全請求権など)である場合には、訴訟手続は中断せず、終了する(人訴法第27条、第41条第2項および第3項参照、また、a) 養子縁組取消訴訟について、最判昭51・7・27 民集30-7-724)、b) 婚姻無効確認の訴えについて、最判平元・10・13 判時1334-203、c) 労働者の地位確認の訴えについて、最判平元9-22 判時1356-145)。

 A 法定代理人 が死亡したり、法定代理権が消滅する場合も、訴訟手続は中断する(第124条第1項第3号)。これは、本人のために訴訟行為を行う者が存在しなくなるためである。なお、未成年者や被後見人であった本人が後に 訴訟能力 を持ち、法定代理権が消滅する場合は、相手方に通知しなければ、その効果は生じず(第36条第1項)、手続も中断しない。

 弁護士や司法書士などの 訴訟代理人(法定代理人ではない)が死亡したり、その代理権が消滅する場合は、本人による訴訟追行が妨げられるわけではないため、中断しない。


(2)新追行者による受継

 上掲の事由によって訴訟手続が中断するときは、新しい追行者によって受継されなければならない。新追行者は、中断事由ごとに法律で定められている(民事訴訟法第124条第1項)。

 新追行者は、中断当時の受訴裁判所に受継を申し立てる必要があるが(なお、相手方も申立てをすることができる〔第126条〕)、受継の適法性について、裁判所は職権で調査し、理由がないと認めるときは、決定で受継の申立てを却下しなければならない(第128条第1項)。なお、この決定に対し不服を申し立てることができる(抗告、第328条第1項)。

 受継の申立てが却下されれば、手続は依然として中断したままとなる。他方、裁判所が受継を認めるときは、裁判所は期日を指定し、審理を続行する。これによって、中断は終了する。


(3) 裁判所による続行命令

 当事者双方が受継を申立てないときは、中断当時の受訴裁判所は、職権で続行を命じることができる(第129条)。なお、この続行命令は、「命令」ではなく、「決定」という形式で裁判所によって下される(参照)。
 


2.2.中止

(1)中止事由

 @ 天災やその他の事由により、裁判所が職務を執行できなくなるとき、係属中の訴訟手続は、その事由が消滅するまで中止する(第130条)。

 A 当事者に不定期間の故障があるときも(例えば、伝染病によって隔離されたり、交通手段の障害によって裁判所への出頭が著しく困難であり、そのような状態がいつ解消するか判明しえないとき)、手続保障を図る観点から、裁判所は手続を中止することができる(第131条第1項)。


(2)手続の再開
 上掲の中止事由が消滅したとき、裁判所は訴訟手続を再開する。なお、第131条第1項に基づき、裁判所が訴訟の中止を決定し、中止事由が消滅したため、手続を再開するときは、同決定を取り消すことができる(第131条第2項)。
 




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