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ユスティティア EUの教育・青少年政策




B.  受 訴 裁 判 所


2. 移送

 受訴裁判所は提起された訴えを他の裁判所の管轄に移すことができ、また、場合によっては、移さなければならない。これを 移送 と呼ぶが、以下のように分類しうる。


移送



(1) 管轄違いを理由とする移送(民事訴訟法第16条)

 訴えが裁判所の管轄に属さないことを理由に却下されると、再び訴えを提起するための費用が原告には発生する。また、起訴による時効中断や期間遵守の利益が失われる(民法第147条、149条および第201条参照)。他方、裁判所が管轄裁判所に移送することは、それほど困難ではない。そのため、管轄違いを理由とする移送が認められている。

 簡易裁判所の管轄に属する訴えが地方裁判所に提起された場合、後者が相当と認めるときは、そのまま審理・裁判しうる(第16条第2項)。


(2) 遅滞を避ける等のための移送(第17条)

 民事訴訟法第4条以下の規定や管轄の合意などに基づき、複数の第1審裁判所の管轄が認められる場合がある。このようなケースにおいて、原告が訴えを提起した裁判所で審理を行うとすれば、裁判が著しく遅れたり、当事者間の衡平に失する場合がある。これを避けるため、受訴裁判所は、当事者の申立てにより、または職権で、訴訟を他の管轄裁判所(この裁判所も管轄権を有していなければならない)に移送することができる(第17条)。この移送は、管轄の合意に合致していなくてもよい。つまり、裁判所は管轄の合意に従わず、移送することができる(参照)。


(3) 簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送(第18条) 

 簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合であれ、当事者の申立てにより、または職権で、その所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる(第18条)。実際に移送するかどうかは、簡易裁判所(受訴裁判所)によって決定される。

 なお、不動産に関する訴えについては、被告の申立てがあれば、その所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない(第19条第2項本文)。


(4) 当事者の申立ておよび相手方の同意による移送(第19条第1項) 

 訴えがある裁判所の管轄に属する場合であれ、一方の当事者が移送を申立て、かつ、相手方がこれに同意するときは、裁判所(第1審裁判所)は、両当事者が希望する裁判所に訴訟を移送しなければならない。これは、提訴後に 管轄の合意 を認めるものと捉えることができる。ただし、@移送によって訴訟手続が著しく遅滞したり、または、A本格的な審理が開始されている場合は認められないが、簡易裁判所から地方裁判所への移送についてはいつでも応じなければならない(つまり、Aは適用されない)。


(5) 特許権等に関する訴え等にかかる移送(第20条の2)

 特許権等に関する訴えは、東京地方裁判所、大阪地方裁判所、または東京高等裁判所の専属管轄に属する(第6条)。これは、特許権等に関する裁判には専門技術的な知識が必要と解されるためであるが、個々のケースにおいて、専門技術的な判断が必要とされない場合は、当事者の申立てにより、または職権で、本来の管轄裁判所に移送することができる。また、著しい損害または地帯を避ける必要がある場合も同様である(第20条の2)。



 なお、訴えが受訴裁判所の専属管轄に属するとき、(2)、(3)、(4)の移送は認められない(第20条第1項)。





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