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ユスティティア EUの教育・青少年政策



E.   訴 訟 の 審 理

  6. 証明

  6.1. 証拠とは



 当事者間で争いのない事実について、裁判所はそれをそのまま採用し、判決の基礎にしなければならないが、争いのある事実については、証拠による証明を必要とする(証拠裁判主義第247条参照)。

 通常、裁判所は当事者が提出した証拠に基づき判断しなければならない。つまり、当事者が主張・証明しない限り、裁判官は、たとえ偶然に知りえた事実であれ、判決の基礎にしてはならない(弁論主義ないし職権証拠調べの禁止)。もっとも、職権探知主義が適用される特別なケースでは、職権で証拠を収集し、裁判の基礎にすることができる(リストマーク 職権探知主義)。
 

 @ 証拠方法

 裁判官が取り調べることができる有形物を 証拠方法 と呼ぶ。これには、証人、当事者本人、鑑定人 を対象にする 人証 と、文書、検証物などを対称にする 物証 がある。



人証 ・・・ 証人、当事者本人、鑑定人 を対象に行われる(詳しくは こちら)。

 

物証 ・・・ 文書、検証物 を対象に行われる(詳しくは こちら)。


 A 証拠資料

 証拠方法の取り調べによって裁判官が感得した内容を 証拠資料 という。  


(例) 人証の場合 ・・・ 証人の証言
当事者の供述
鑑定人の鑑定意見

物証の場合 ・・・ 文書の記載内容


 B 証拠原因
 裁判官が確信を抱くにいたった資料や情況を 証拠原因 と呼ぶ。これには、Aの証拠資料の他に、弁論の全趣旨 が含まれる(第247条)。


 C 証拠力
 証拠資料が事実認定に役立つ程度を証拠力と呼ぶ。文書が真に作成者によって作成されていれば(つまり、第3者によって偽造されていなければ)、文書は形式的証拠力を有し、記載内容が真実に合致し、どの程度、要証事実の証明に寄与するか(実質的証拠力)審査される(詳しくは こちら)。


  6.2. 証明とは

 (1) 証明と疎明
 当事者間で争われ、証明を要する事実について、裁判官が真実であると確信するにいたった場合、裁判官はこれを基に判決を下すことができる。このように裁判官が確信を得た状態 証明 と呼ぶ。また、裁判官に確信を抱かせるために証拠を提出する行為を証明という。

 これに対し、迅速な処理を必要とする事項や派生的な手続問題については、一応、確かであるという程度の蓋然性があれば足り、これを 疎明(そめい)という(第35条第1項、第44条第1項、第198条など)。


 (2) 厳格な証明と自由な証明
 法定の証拠調べ手続に従い行われる証明を 厳格な証明 といい(第179条〜第242条)、法定の手続に拘束されない証明を 自由な証明 と呼ぶ。



  6.3. 証明の対象

 (1) 事実

 @ 主要事実 リストマーク 主要事実については こちら

  一方の当事者(例えば原告)が主張する主要事実を相手方(被告)が争う場合、前者(原告)はその存否ないし真偽を証明しなければならない。裁判所は当事者が主張・証明しない事実を判決の基礎にすることはできない が、裁判所に顕著な事実については証明を必要としない(第179条)。また、相手方当事者が自白した事実についても証明を必要としない。


 A 間接事実リストマーク 間接事実については こちら

 主要事実の証明が困難なときは、間接事実 を通じて、その真否を推認することになるが(参照)、このようなケースでは、間接事実についても証明しなければならない。ただし、弁論主義は間接事実には適用されないため、裁判所は、当事者が主張・証明しない間接事実を判決の基礎とすることができる。


(2) 法令
 「裁判官は法律を知る」という原則に基づき、法令は証明の対象にはならない(外国法の証明については こちら)。


(3) 経験則
 経験から導かれる知識や法則を 経験則 と呼ぶ。経験則とは具体的な事実ではなく、当事者の主張・証明する事実が真実かどうか判断する際の基礎となる知識や法則(一般通念や論理性)を指す。
 

(例)

 特段の事情の無い限り、時価より著しく安い値段で売買が行われることはないと解される。このような経験側(取引上の通念)に基づき、最高裁は、建物の売買が実際に行われたかどうかが争われたケースにおいて(実際には売っておらず、登記の移転も仮装されたものであるとし、登記の抹消が請求されたケース)、時価約165万円の建物等を約10万円で売買することは、経験則上、是認できないと判断した。詳細には、確かに、持ち主が税金を滞納していたため、本件建物は差し押さえられていたという事実も存するが、滞納額は約13万円であり、それを差し引いても約152万円の価値がある建物を約10万円で売ることは、経験則上、是認できないため、特段の事情の有無について審理することなく、売買がなされたと判断した原判決は審理不尽、理由不備の違法があるとした(最判昭36・8・8、判例百選II 〔新法対応補正版〕420頁)。


 経験則には、社会人なら誰でも知っている一般常識的なものや、専門家でなければ知りえないものがある。前者は証明を要しないが、後者は、当事者に攻撃防御方法を尽くさせ、公正な裁判を実現するために証明が必要と解されている。また、担当裁判官が個人的な研究や私的経験から知りえた経験則も証明を要する(第23条第1項は、裁判官が証人や鑑定人になり えないと定めているのも同趣旨である)。


 

  6.4. 証拠申出

  (1) 当事者による申出

 上述したように、当事者間で争いのある事実について、当事者は証明しなければならない。そのために証拠調べが行われるが、弁論主義 に基づき、証拠調べは、原則として、当事者の申し出た証拠(証拠方法)について行われる(なお、例外的に 職権証拠調べ が可能な場合について、第14条、第207条第1項、第228条第3項、第233条等を参照されたい)。

 当事者が裁判所に対し、特定の証拠の取調べを求める申立てを 証拠申出 と呼ぶ。申出には以下の事項を具体的に示さなければならない(規則第99条第1項)。

  @ 証明すべき事実(要証事実)
  A 証拠方法
  B 両者の関係(立証趣旨)

 この書面は相手方に直送しなければならない(規則第99条第2項)。なお、相手方には 証拠抗弁 を提出する機会が保障されていなければならない。また、証拠申出は攻撃防御方法の一つであるから、適切な時期に行われなければならず(第156条)、裁判所は時機に後れた申出を職権で却下しうる(第157条第1項)。

 期日における取調べを可能にするため、申出は期日の前に行うことができる(第180条第2項)。なお、裁判長は特定の事項に関する証拠の申出期間を定めることができる(第162条)。

 証拠調べが実施されるまで、当事者は申出をいつでも撤回することができるが、証拠調べが開始された後は、相手方の同意がなければ撤回しえない(これは証拠共通の原則 に基づいている)。

 申出人は、原則として、証人や鑑定人に支払う報酬、また、裁判官や裁判所書記官の旅費・宿泊料(概算)を予納しなければならず、なされなければ、裁判所は証拠調べを行わなくともよい。


(2) 裁判所による申出の審査

 相手方当事者の 証拠抗弁 を考慮したうえで、裁判所は証拠申出に応じ、証拠調べを行うべきかどうか決定する(第181条第1項参照)。これを 証拠決定 と呼ぶ。裁判所によって審査されるのは以下の点である。

 @ 証明を要する事実(要証事実)と証拠方法の関連性

関連性の無い証拠を取り調べる必要は無い(第181条第1項)。


 A 証拠に基づき、要証事実を証明する必要性

例えば、相手方当事者が自白している場合は、証明の必要性が無い(第179条)。


 B 証拠申出の適法性

例えば、前述した費用が予納されているかどうかなど


 C 証拠調べに不定期間の障害があるか(第181条第2項)

例えば、証拠調べを実施しうる見込みがなく、また、証人が行方不明の場合など


 D 唯一の証拠方法であるか

 裁判所は、証拠申出に応じ、証拠調べを実際に行うかどうか判断するが、 ある争点に関し、唯一申し出られた証拠(これを 唯一の証拠方法 と呼ぶ)を却下し、証拠調べをせずに 弁論の全趣旨 のみを証拠資料として判断を下すことは認められない。ただし、当事者が怠慢であり、合理的な期間内に証拠調べを行うことができないような場合には例外が認められる。
 

 証拠決定は、相当と認められる方法で告知すればよい(第119条)。なお、この決定に対し、当事者は直ちに独立の不服申立てを行うことができず、判決が下された後に上訴しうるに過ぎない(第283条)。


  6.5. 人証の取調べ

 人証には、証人尋問、当事者尋問、鑑定がある。

 (1) 証人尋問
  @ 証人尋問とは

 証人尋問とは、証人 となる者に口頭で質問し、その経験した事実を供述(証言)さ せる形で行われる証拠調べを指す。


  A 証人義務(第190条)

 我が国の裁判権(司法権)に服するすべての者は証人となり、裁判所に出頭し(出頭義務)、宣誓を行った上で(宣誓義務)、証言を行う義務を負う(供述義務)。また、正当な理由なく、これらの義務を怠るときは刑事罰などに問われることがある。確かに、このような強制は証人となる者に精神的・経済的負担を強いるが、真実に合致した紛争解決という民事訴訟制度の機能を維持するために認められている。

 上述したように、証人義務は、出頭義務、宣誓義務および供述義務という3つの義務からなるが、個々の義務の詳細は以下の通りである。


証人


 a. 出頭義務(第192条〜第194条)

 

 証人となる者は、証人尋問のために裁判所に出頭しなければならず、正当な理由なく出頭を拒むと、それによって生じた訴訟費用を負担させられたり、過料(第192条)、罰金または拘留という刑罰(第193条)を科せられる。また、強制的に出頭させるため、裁判所は証人の身柄を拘束することができる(勾引、第194条)。

 なお、重病 、交通機関の故障、海外旅行、また、出頭費用が不足していたり、呼出状の送達が遅れ出頭期限に間に合わないなどの正当な理由があれば、出頭を拒むことができる。


 b. 宣誓義務(第201条)

 

 証言に際し、証人は、良心に従って真実を述べ、何事も黙秘しないことを宣誓しなければならず(第201条第1項)、宣誓の後、虚偽の供述をすると、偽証罪(刑法第169条)に問われる。

 また、正当な理由なく宣誓を拒むと、過料等の制裁が加えられるが(第5項)、以下の例外が認められる。

16歳未満の者または宣誓の趣旨を理解できない者については、宣誓をさせることができない(第2項)。

証言拒絶権を有する者がこの権利を行使せず、証言する場合は、宣誓を免除することができる(第3項)。これは、同人を偽証罪に問うのは酷であるとの理由による。

証人やその親族に著しい利害関係を有する事項について証言させられるときは、宣誓を拒むことができる(第4項)。これは、虚偽の証言を防ぐという宣誓の機能が期待できないため である。


 c. 供述義務(第200条)

 

 証人は自らの経験や認識を誠実に証言しなければならず、正当な理由なく証言を拒む場合には、過料、罰金または拘留という刑罰を科せられる(第200条)。なお、以下の場合には例外が認められる。 

証人自身やその親族(配偶者や四親等内の血族など〔第196条参照〕)が刑事訴追や有罪判決を受けるおそれがある事項について尋問を受ける場合(証言拒絶権、第196条)

 このような場合にまで証言を義務付けることは、証人にとって酷であるため、証言拒絶権が認められている(憲法 第38条第1項参照)。

 

法律上、または、職務上、守秘義務が課されている事項について尋問を受ける場合(第197条)

 なお、医師や弁護士(第197条第1項第2号)が守秘義務を負う事項について、患者や依頼人が秘密保護の利益を放棄したときは、証言を拒むことはできない(第2項)。

 

技術的または職業上の秘密に関する事項について尋問を受ける場合(第197条第3項)



(2) 当事者尋問

     省略


(3) 鑑定

     省略




  6.6. 物証の取調べ

 物証の対象となるのは、@ 契約書や文書記録などの文書や、A 売買の目的物や事故現場などの検証物であるが、@の取調べを 書証、また、Aの取調べを 検証 と呼ぶ。以下では、書証について説明する。


 (1) 書証
  @ 書証の対象と証拠力
 前述したように、書証とは証拠方法として提出された文書(証拠方法)を裁判所が取り調べることを指すが、文書とは作成者の思想、認識、報告が文字や記号を用いて表現された有体物をいう。表現方法(文字か、暗号か)や記載方法(手書きか、印刷したものか)は問わない。

 

(例)

契約書、借用書、医師の作成したカルテ

図面、写真、録音・録画テープは、思想が表現されていないので文書にはあたらないが、文書に準じて書証の対象になる(準文書、第231条)。

フロッピーディスクや光ディスク は、プリントアウトし、文書に準じた取り扱いがなされる。


 文書は、真に作成名義人によって作成され、その内容が正しくなければならない。真に作成名義人によって作成されている場合、成立が真正 であるという(第228条第1項参照)。この場合、文書は 形式的証拠力 を有し、記載内容がどの程度、要証事実の証明に役立つか(実質的証拠力) 、裁判官によって判断される。


成立の真正 → 形式的証拠力 → 実質的証拠力の調査



 (a) 公文書と私文書

 公務員が職務上、作成する文書を 公文書 と呼び、それ以外の文書を 私文書 という。文書は、その成立が真正であること、つまり、作成名義人が本当に作成したかどうかを証明しなければならないが(第228条第1項)、公文書については、成立の真正が推定される(同第2項)。他方、私文書は、本人または代理人の署名または押印がある場合に、成立が真正であると推認される(同第4項)。


 (b) 処分証書と報告証書

 法律行為を行うために作成される文書を 処分証書 と、また、作成者の意見や報告を記したに過ぎないものを 報告証書 という。

     (例)処分証書 ・・・ 手形、遺言(民法第967条参照)

 処分証書は、成立の真正(形式的証拠力)が証明されれば、記載した法律行為をした事実が直接証明される(実質的証拠力の肯定)。そのため、その成立の真正を争う独立の訴え(証書真否確認の訴え第134条)を提起することが認められる。

 これに対し、報告証書は、成立の真正が証明されても、記載内容の正しさは証明されない。


 A 書証の手続

 要証事実を文書によって証明しようとする当事者(挙証者)は、裁判所に書証を申し出なければならない。書証の申出は、挙証者が文書を所持しているときは、これを裁判所に提出し、また、相手方当事者や第3者が所持しているときは、裁判所に 文書提出命令 か、文書の送付嘱託 を申し立て、行う(第219条、第226条)。

 文書提出命令 とは、裁判所が書証の対象となる文書を所持する者に、その提出を命じる決定を指す。現行民事訴訟法は、文書提出義務を広く認めている(第220条第1号〜第3号)。

リストマーク

例外的に提出が義務付けられない文書(第220条第4号)

文書の所持者またはその近親者が刑事訴追や有罪判決を受けるおそれのある事項が記載されている文書

  リストマーク 証言義務を参照

 

自己使用文書

 自己使用文書とは、@ もっぱら内部(例えば社内)の者が利用するために作成され、外部への公開が意図されておらず、A 仮に、開示されると、個人のプライバシーが侵害されたり、個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されるなどの著しい不利益が文書所持者のもとに生じるおそれがあり、かつ、B 自己使用文書としての性質を否定する特段の事情がないという3つの要件を満たす文書である。この基準に従い、近時の判例は、例えば、金融機関の貸出稟議書は、特段の自由がない限り、自己使用文書にあたるとし、裁判所への提出義務が免除されている(判例)。

 なお、上例のケースに該当し、文書提出義務が否認されるかどうかを調べるため、文書の提出を命じることができる(第223条第6項、イン・カメラ手続)。



 リストマーク 文書提出命令に従わない場合

 文書を所持する当事者が文書提出命令に従わないときは、当該文書に記載された事項に関する相手方の主張が正しいと擬制される(第224条第1項)。当事者が相手方の使用を妨げる目的で文書を滅失させたり、その他の方法により使用できなくした場合にも、同様に、当該文書に記載された事項に関する相手方の主張が正しいと擬制される(第2項)。さらに、これらのケースにおいて、相手方が当該文書の記載について具体的な主張をしたり、当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる(第3項)。

 第3者が文書提出命令に従わないときは、20万円以下の過料に処される(第225条第1項)。
 

 リストマーク 文書提出命令の申立て

 文書提出命令の申立ては、以下の事項を明らかにして書面でしなければならない(第221条第1項)。


文書の表示(→ 特定が著しく困難なケースについて、第222条参照)

文書の趣旨(→ 特定が著しく困難なケースについて、第222条参照)

文書の所持者

証明すべき事実(要証事実)

提出義務の原因 (→ 第220条各号のいずれに該当するかを記載するが、第4号の場合について、 第221条第2項参照)





区切り線


リストマーク

 証拠抗弁 とは、当事者の一方が行った証拠申出について、相手方が、@ 申出手続が違法であること、または、A 証拠適格、証拠能力、もしくは、証拠力に欠けることを理由とし、裁判所に証拠申出の却下を求めたり、または、すでに行われた証拠調べの結果の不採用を求める陳述を指す。


リストマーク

 証拠共通の原則 とは、口頭弁論において適法に行われた証拠調べの結果は、どちらの当事者によって証拠調べが申し立てられたかを問わず、事実認定の基礎に用いることができるとする建前を指す。例えば、裁判官は、原告が申し出た証拠より、同人に有利となる事実だけではなく、相手方(被告)に有利な事実を認定することもできる。これによって、事実認定が適切に行われるようになる。






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