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ユスティティア EUの教育・青少年政策




E.   訴 訟 の 審 理


3. 弁論の準備

 通常の民事訴訟手続において、事実の主張・証明(参照)は当事者によってなされ、裁判所は、当事者が主張・証明した事実に基づき、判決を下す(弁論主義)。事実の主張・証明は、原則として、公開された法廷において、口頭で行われるが(一般公開主義〔第82条第1項〕、口頭主義〔第87条〕)、当事者による訴訟活動が円滑かつ能率的になされ、手続が充実するよう、種々の制度が設けられている。とりわけ、争点を早い段階で整理し、裁判の遅延を避けることが重要であり、そのための方策として、準備書面が古くから用いられているが、昭和の終わりから平成の始めにかけては、新しい制度(争点中心審理、集中審理)が導入されることになった。また、平成8年の民事訴訟法改正の際には、より徹底した制度が設けられた。

3.1.準備書面 
 準備書面とは、当事者が口頭弁論において陳述する事項を記載し、事前に裁判所に提出し、また、相手方当事者に直送しなければならない書面である(第161条〜第162条、民訴規第79条〜第83条)。地方裁判所以上では、準備書面の提出が義務付けられている(第161条、第276条)。記載すべき事項は第161条第2項および民訴規第79条〜第81条で定められているが、これは相手方当事者に防御の準備をする機会を与え、また、裁判所の訴訟指揮を容易にすることを目的としている。なお、提出期間は裁判長によって決定される。現在は、ファクシミリで送ることも認められている(民訴規第3条、第47条)。

 準備書面は訴状や上訴状で兼ねることもできる(民訴規第53条第3項、第175条)。なお、被告が最初に提出する準備書面を答弁書と呼ぶ(第80条)。
 
 当事者が最初の口頭弁論期日に欠席する場合、同当事者が準備書面、答弁書および訴状に記載したことは陳述したものとみなされる(第158条)。相手方当事者が在廷していないときであれ、準備書面に記載していた事実を主張することが認められるが(→ 条文をチェック 第162条第2項)、記載されていない事項を陳述することは許されない(→ 条文をチェック 第161条第3項、第276条第3項)。



3.2.争点・証拠の整理
(1) 準備的口頭弁論

 準備的口頭弁論とは、争点や証拠の整理のために実施される口頭弁論である。口頭弁論であるため、公開された法廷において行われる。また、当事者尋問や証人尋問を含む、争点・証拠の整理に必要なすべての行為をなすことができる。

 裁判所は、準備的口頭弁論が必要であると判断するとき、当事者の意向に関わりなく、開始しうる(第164条)。その後の証拠調べにより、証明すべき事実が明確になれば、終了するが、その際には、裁判所と両当事者によって、その証明すべき事実が確認される(第165条)。なお、当事者が期日に出席しないか、準備書面の提出や証拠の申し出の期間内に提出や申し出がなされないときにも、裁判書は準備的口頭弁論を終了することができる(第166条)。

 準備的口頭弁論の終了後、その結果を無視するような形で新たな攻撃防御方法を提出する当事者は、相手方から要求されれば、準備的口頭弁論の終了前に提出しえなかった理由を説明しなければならない(第167条)。



(2) 弁論準備手続
(第168条〜第174条)
 弁論準備手続とは、争点や証拠の整理のために実施される手続の一つである。前掲の準備的口頭弁論とは異なり、法廷以外の場で、非公開の下に実施することができるため、当事者のプライバシー保護が必要な場合などに向いている。この手続において、受訴裁判所は、文書の証拠調べや期日における裁判(証拠の申出に対する裁判、電話会議の方法による裁判、弁論準備手続の対象の制限、分離または併合、釈明処分として準当事者に陳述させることなど)を行うことができる。また、口頭弁論の期日外でも行いうる裁判(補助参加の諾否の裁判、訴えの変更の諾否の裁判、訴訟手続の受継申立却下の裁判など)も実施しうる。

 この手続は、受訴裁判所が争点・証拠の整理のために必要であるが、準備的口頭弁論よりも、非公開のこの手続による方が適切であると判断する場合に、両当事者の意見を聴いた後に、決定によって開始される(第168条)。原則として、受訴裁判所が手続を指揮するが、一定の範囲内で、受命裁判官に実施させることもできる(第171条)。

 この手続は、両当事者が出席できる期日において実施されるが(第169条)、両当事者の立ち会いが条件ではないため、当事者の一方が期日の呼び出しを受けたにもかかわらず欠席する場合であれ、事前に意見を聴き、電話会議の方法により出頭した場合と同様に手続を行うことができる(第170条第3項)。この当事者は、期日に出頭したものとみなされ(第4項)、必要な訴訟行為をすることができる(その例外として、第5項参照)。

 争点や証拠の整理を円滑かつ実効的にするため、裁判所は期日を公開しなくてもよいが、相当と認める者の傍聴を許可することができる。なお、当事者が申し立てた者の傍聴は原則として認められなければならないが、手続に支障がでる場合には、許可しないこともできる(第169条)。

 手続は、その後の証拠調べにより、証明すべき事実が明確になれば終了するが、その際には、裁判所と両当事者によって、その証明すべき事実が確認され、その結果を要約した書面が作成される(第170条第6項による第165条の準用)。また、最初の口頭弁論期日において、直ちに証拠調べができるように準備される(民訴規第101条)。弁論準備手続の結果は、口頭弁論期日において陳述されるが(第173条)、重点は、証明すべき事実として確認された事項におかれ(民訴規第89条)、その後、当該事実について集中証拠調べが行われる(第182条)。

 弁論準備手続の終了後、その結果を無視するような形で新たな攻撃防御方法を提出する当事者は、相手方から要求されれば、手続の終了前に提出しえなかった理由を説明しなければならない(第174条による第167条の準用)。

 

(3) 書面による準備手続
(第175条〜第178条)
 書面による準備手続とは、
争点・証拠の整理やその他の口頭弁論の準備に必要な事項について、当事者双方と協議するために実施される手続を指す(第176条第3項参照)。現行民事訴訟法に新たに導入された。手続は、両当事者が裁判所に出頭することなく(第175条)、準備書面に基づき実施されるが(第176条第2項)、必要に応じ、電話会議の方法を用いることもできる。

 この手続は、当事者が遠隔地に居住していたり、その他の理由に基づき、裁判所が相当と認めるときに(例えば、当事者が負傷し、裁判所への出頭が困難であったり、訴訟代理人が遠隔地に事務所を設けているときなど)、事前に両当事者の意見を聴き、実施される(第175条)。

 手続は、受訴裁判所の裁判長によって主催され(第176条)、裁判長が手続の終了を決定する。終了に際し、この手続の結果を要約した書面を当事者に提出させることができる。なお、両当事者が手続に出席するわけではないため、終結後の口頭弁論期日において、証拠調べによって証明すべき事実が確認される(第177条)。また、提出された書面の記載事項が当事者によって述べられる。

 書面による準備手続の終了後、新たな攻撃防御方法を提出する当事者は、相手方に対し、説明義務を負う(第178条)。



 争点・証拠の整理手続の一つである。上掲の3つの手続のいずれによるかは、裁判所が個々のケースの特性を考慮し、決定する。例えば、口頭弁論の一つである準備的口頭弁論は、公開の法廷で行われるため、当事者のプライバシーに関わる争点の整理には向かない。これに対し、弁論準備手続は、法廷以外の部屋で、公開せずに実施することができるといった長所があるが、書面による準備手続によれば、裁判所に出頭する当事者の負担を緩和することができる。なお、裁判所は手続を選ぶ際に、当事者の意見を聴かなければならない(第168条および第175条)。

 上掲の3種類の争点整理手続の実施時期は特に限定されていない。つまり、第1回の口頭弁論期日の前に行うことも可能であるが、一般的には、第1回目の口頭弁論期日において、裁判所が当事者の主張を聴き、争いのある事実とない事実に分けた後で、手続を実施することになる。なお、口頭弁論期日に先立ち、弁論準備手続を実施することができるのは、当事者が異議を申し立てない場合に限られる(規則第60条第1項括弧書)。




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