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E.   訴 訟 の 審 理


7. 事実認定

 自らの権利を実現するため、原告は自らの権利の発生に必要な事実(主要事実)を主張し、また、相手方当事者が争うときは、証明しなければならない。当事者が提出した証拠に基づき、裁判官はこの事実の存否について判断しなければならないが、これを 事実認定 と呼ぶ。

 (1) 自由心証主義

 事実認定にあたり、裁判所は証拠調べの結果だけではなく、審理に現れた全ての資料(証拠資料)や状況を自由に評価することができる。これを 自由心証主義 と呼ぶ(第247条)。

 これに対し、証拠方法の種類やその証明力について、法律によって裁判官の判断を拘束する立場を 法定証拠主義 という。この原則によれば、裁判官の恣意を排除することができるが、画一的な証拠法則は社会関係の複雑化に対応しえず、真実発見が妨げられる(おそれがある)こと、また、裁判官の質の向上に基づき、現在は、自由心証主義 が採用されている。

 「自由」心証主義の下でも、裁判官の恣意的な判断は許されず、事実の推定は、論理的法則や 経験則 に基づいていなければならない。


(2) 口頭弁論の全趣旨

 第247条は、 「裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する」と定めるが、口頭弁論の全趣旨 とは、口頭弁論に現れた一切の資料から証拠調べの結果(証拠資料)を除いたものである。

(例)

当事者や代理人の弁論内容・態度、攻撃防御方法の提出時期

 これらの点を考慮し、裁判官は、当事者の主張が真実かどうか判断することができる。

 

 通常、口頭弁論の全趣旨は、証拠調べの結果を補充するものとして用いられるが、裁判官がそれのみで心証を形成しうるときは、証拠調べを行わなくてもよい。


(3) 証拠能力と証明力

 裁判官が、ある証拠資料を事実認定に用いることができる場合、その証拠資料は 証拠能力 を有するという。自由心証主義の下、証拠能力は一般に制限されない。

刑事訴訟とは異なり、伝聞証言や児童の証言であれ、証拠能力が認められる。

 ただし、これらの証拠資料がどの程度、事実の証明に役立か(証明力)は、裁判官の自由な心証に委ねられている。




リストマーク 違法に収集された証拠(違法収集証拠)

 著しく反社会的な手段を用い、人格権を侵害する方法によって収集された証拠は、その収集行為自体が違法であり、証拠能力が否定される。

 




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